吉本隆明全集第24巻

1987-1990


単行本未収録15篇を収録

『共同幻想論』の「現在」版とも規定された『ハイ・イメージ論』の「III」、
唯一のテレビ時評『情況としての画像』などを収録

ハイ・イメージ論Iは第22巻に、IIは第23巻に収録。

第25回配本 近刊 2021/01下旬

月報執筆者(順不同・敬称略)

"吉本隆明と連合赤軍事件

笠井潔

石と舟の幻影

今福隆太

1片の追悼

ハルノ宵子

ISBN 978-4-7949-7124-1 C0395
価格 定価7,700円
(本体7,000円+税10%)
判型・造本 A5判変型・上製
ページ数 726頁

24第24巻訂正・補記箇所 ■刊行後の訂正箇所です

【七一七・上・13―14の間に以下の文を補う】  連載中止が突然のことであったため、噂を呼び、週刊誌の記事にもなったが(『サンデー毎日』一九九〇年七月二九日号)、そこでも電話取材に「ノーコメント」としか応じていない。連載を中止したことについて、著者は公的にはいっさい発言していないが、著者の著作発表にとっては、大きな出来事であったと思われるので、考慮すべき諸点について列記しておく。
(1)のちに川端要壽(〓寿の旧字Unicode58FD)が小説仕立てでその時の著者の憤慨の様子を描写している。(「吉本隆明の日常」、著者の講演録『戦争と平和』二〇〇四年八月一五日、文芸社刊に「付録」として収録)その憤慨の中心に、福武書店が、柄谷行人・浅田彰編集の同人誌『批評空間』を出そうとしていることがあったことは確かだと思える。
 ただそれが連載中止に結びついたことについては、もう少し推測の言葉を付けたとしておきたい。
(2)『ハイ・イメージ論』連載を中止した編集社は、寺田博であった。寺田は河出書房新社で『共同幻想論』の『文芸』連載(一九六六~一九六七年)と単行本化(一九六八年)を手掛け、それに続いて『情況』の同誌連載(一九六九~七〇年)、さらに『初期歌謡論』の『文藝』連載(一九七四~七五年)と単行本化(一九七七年)を手掛け、河出書房新社を退社して作品社を設立し、文芸誌『作品』を創刊(一九八〇年)して著者の「文芸時評」を連載し、雑誌が七号で立ち行かなくなった後もガリ版刷りの小冊子で連載を続け、福武書店に入社して『海燕』を創刊(一九八二年)して、「文芸時評」の最終回を創刊号に掲載し、ひと月おいて同誌で『マス・イメージ論』の連載を再開し、『マス・イメージ論』を単行本にまとめ(一九八四年)、一九八五年から「ハイ・イメージ論Ⅰ」、「ハイ・イメージ論Ⅱ」を刊行していた(一九八九年、一九九〇年)。
 つまり、寺田博は、著者の六〇年代後半から九〇年代初めにかけての書き下ろしを除く主要な長編著作の毎月連載、単行本化のほとんどの編集に切れめなく関わっている。それだけ著者が長い継続的な主題を展開するときに信頼の篤い編集者であったと言うことができると思われる。
(3)一方で著者の同人誌というものに対する非常に厳密な考えを見ておく必要があると思われる。全般的なその考え方については「『試行』の立場」に語られているが(第二一巻収録)、試行出版部の設立に際しての協力者である川上春雄への激越な書簡の内容から窺えるように(第三七巻収録、書簡番号33ー66参照)、自らの雑誌と出版部のありように極めてリジッドなガードの硬い姿勢を持っていて、通常の商業出版社の雑誌や小出版社の出版の流儀とその位置づけを厳密に区別しようとする考えが強くあった。
(4)他方では出版界には、著作家サイドの同人誌刊行の欲求と出版社側のその文化的影響力を取り込みたい欲求との結合が時々生じ、同人誌を出版社が刊行することはそれまでにもいくつかあった。そういう双方の動きについて、同人誌に対しても、出版社に対しても、著者は否定的・消極的な判断を持っていたと思われる。
(5)寺田博と福武書店は、『批評空間』同人の版元を探す動きに対応し、刊行の準備を進めていたと思われる。 しかし著者にとっては、寺田博との間に雑誌連載、単行本化の共同作業の長い期間の継続によって生じていた強い紐帯と寺田博がその刊行を引き受けることとは両立しがたいと感じられたのだと思われる。いっさい公的に発言しなかったのは、すべてを個人的な思想感情の問題として連載中止で処理するのがふさわしいと判断したからだと思われる。
(6)『ハイ・イメージ論Ⅲ』が単行本化までに時間がかかり、手直しも僅かにとどまったのは、意欲が削がれたためであったと思われる。
 こうして「ハイ・イメージ論」の連載は、一九六〇年代後半から九〇年代初めにかけての毎月連載の長編評論の残り、『海』連載の『書物の解体学』(一九七二~七三年)と『西行論』(「僧形論」「武門論」一九七六年)、『マリ・クレール』連載(一九八六~九一年)の『新・書物の解体学』の編集を手掛けた安原顯の手に編集がバトン・タッチされたことになる。

【七二五・上・6の末尾に補う。】
『吉本隆明資料集101』(二〇一〇年一二月三〇日)にも収録された。

補記(1)~(3)の考え方は

月報(編集部より)第24巻(第25回配本)(2021年1月)

*次回配本は第25巻です。発売は3月下旬を予定しております。

(#記述事項は発刊時のものです)

I

ハイ・イメージ論 III
 舞踏論
 瞬間論
 モジュラス論
 エコノミー論
 幼童論
 消費論
 あとがき

II

情況としての画像――高度資本主義下の[テレビ]――
 テレビはどこへゆくか
 スポーツ視たまま
 映像の共同体
 報道番組 I
 報道番組 II
 年末と年始の祭り
 エコロジー談義 I
 視聴率はどうか
 ハイビジョンをめぐって
 美空ひばり I
 テレビCMはいま
 視聴者の言ってみるだけ
 エコロジー談義 II
 テレビの話芸
 ソウル・オリンピックの画像
 ドキュメントの画像
 視線論
 昭和天皇の死
 Mr.マリック論/手塚治虫論
 テレビのよさといかがわしさ
 ドキュメント性とドラマ性
 報道番組 III
 天安門事件
 美空ひばり II
 「現在」化と大衆
 あとがき

III

初収録/ 初収録/ 初収録人間の死 自然の死 農業の死
〔 解題より 〕 著者没後だが、『吉本隆明〈未完〉講演集3』(2015年2月10日 筑摩書房刊)にも収録された。初収録
谷中ーー私の散歩道
七〇年代のアメリカまで――さまよう不可視の「ビアフラ共和国」――
初収録 初収録 西川徹郎さんの俳句
初収録 初収録 生きていた西行
島尾敏雄の世界
初収録 初収録 漱石論としての位置――盛忍「漱石への測鉛」――
わが東京
1970東京の民家 [写真構成]
東京についてのノート
南島論序說 〔 解題より 〕 著者没後だが、『吉本隆明〈未完〉講演集3』(2015年2月10日 筑摩書房刊)にも収録された。初収録
異境歌小論――前登志夫について――
いそいで岡本かの子初収録 初収録
〔 解題より 〕『岡本かの子の世界』展図録(1989年2月、朝日新聞社東京本社企画室第一部発行)に発表された。
〔中略〕展示会に合わせて3月10日に講演が「岡本かの子——華麗なる文学世界——」が行われ、『マリ・クレール』1989年8月号に発表された。著者没後だが、『吉本隆明〈未完〉講演集8』(2015年7月10日)に収録された。初収録

情況への発言――《エチカの闘争》――>
初収録 初収録 〝新しい〟という映画
ほんの5gの賭け
水辺の記憶――洲崎(遊郭)の方と大川(隅田川)の方――
初収録 初収録 南島論
〔 解題より 〕 著者没後だが、『吉本隆明〈未収録〉講演集1』(2014年12月10日)『全南東論」にも収録された。初収録
初収録 別れの言葉――三浦つとむ――

IV

初収録 初収録 私のぴあテン1987
〈死〉に関するアンケート

初収録 初収録 井上英一「情報と像」
初収録 初収録 前登志夫「吉野の桜」
初収録 初収録 はじめて出会った大学

初収録 板橋・仲宿商店街
初収録 私ならこんな店
初収録 初収録 ウイークリー・データ 一九八九・七・四〜一〇
〔 解題より 〕 著者没後だが、『週刊宝石』(1989年8月3日第9巻第30号光文社発行)に掲載された目録構成の記事。著作ではないが収録した。

初収録 初収録 小川徹
初収録 初収録 知識でもって立つことの孤独さ [清水幾太郎]
初収録 初収録 森山公夫の場所
初収録 気分がちょっぴり波うつような気がする[『日本名歌集成』]
梅原猛『日本冒険 第二巻 太陽の輪廻』
鮎川信夫が近代以後の詩にはじめてもたらしたもの
初収録 不易流行の太宰治
初収録 初収録 『宮沢賢治語彙辞典』

初収録 『吉本隆明全対談集2』あとがき
初収録 『吉本隆明全対談集3』あとがき
初収録 『吉本隆明全対談集4』あとがき
初収録 『吉本隆明全対談集6』あとがき
初収録 『吉本隆明全対談集7』あとがき
初収録 『吉本隆明全対談集8』あとがき
初収録 『吉本隆明全対談集9』あとがき
初収録 『吉本隆明 [太宰治] を語る』あとがき
初収録 『吉本隆明全対談集10」あとがき
初収録 『〈信〉の構造2 全キリスト教論集成」序
初収録 『〈信〉の構造2 全キリスト教論集成』あとがき
初収録 『〈信〉の構造3 全天皇制・宗教論集成』序
初収録 『〈信〉の構造3 全天皇制・宗教論集成』あとがき
初収録 『吉本隆明全対談集11』あとがき
初収録 『吉本隆明全対談集12」あとがき
初収録 『琉球弧の喚起力と南島論』覚書
初収録 『像としての都市』あとがき
初収録 初収録『試行』第六八号後記


解題(間宮幹彦)

「初収録」表示について

初収録 ・・・本全集に初収録&猫々堂刊『吉本隆明資料集』に収録
初収録 ・・・本全集に初収録
初収録 ・・・上記以外の初収録

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